MISSION×TARGET

みっそん×た〜げっと

ミッション×不良カップルを追え!

無駄に広い校舎をひた歩き、とか言うと健気な感じですけど。自治会権限で普通の生徒には通れない専用の道を通って、生徒理事会である中央委員会に提出を済ませて。
真っ直ぐ講堂に向かった僕は、まだ始業式には大分早い事に気づいた。

「あーあ、残念。まだ8時だ」

途端に足が重くなる。
もう何年も通ってきた学園を見回し、相変わらず小説の世界だと息を吐いた。
白い塔が幾つも纏められた様な校舎はティアーズキャノンなんて大袈裟な名前があるけど、正式名称で呼んでる生徒は余り見掛けない。

校舎からすぐに見える真っ赤な時計台はスコーピオ、桜並木がヴァルゴ。帝王院学園の各施設には星座の名前が付いている。
きっとロマンチストな理事長なんだよね。見た事ないけど。


「腹減ったー。なー、ラーメン食いたくね?(*´∇`)」

あ、このどうやって喋ってるのか全く判らない顔文字入り乱れの声は!

「食堂にゃ、ないだろよ」
「麺が食いたいんだって!(´`)」
「外のカフェテラスにゃ焼きそばがあるぜ。但し夜限定だ」
「ヤル気なくしたっしょ(´;ω;`)」

ああ、やっぱり!
僕に日々凄まじい萌えを一方的に与えてくれる、愛すべきカップルじゃまいか!
180cm超えてそうな緑色の髪は藤倉裕也君、少し小さい元気そうなオレンジ頭が高野健吾君っ!待っていたよ!君達と引き離されたこの一年っ、僕は何度枕を抱き締めて妄想に更けたか!

「ユーヤァ、何か楽しい事ないんかよー(´ω`) なーなー(=・ω・)/」
「副長達の喧嘩で楽しんだろーが。重いから乗るな」
「屋上行こうぜぇ、日サロb(・∇・●) 最近焼いてねぇかんな、夏までに小麦色目指すぞぃ(*´∀`*)」

ああっ、何から萌えれば良いのか判らないよ高野君!
何故に君はボタン全開のシャツからお腹丸出しで、その上藤倉君の背中に飛び付いてるのかな!けしからんもっとやれ!
ああ、面倒臭そうな表情なのに振り払わない藤倉GJ!つか屋上って!屋上って!

入れないよ!
屋上は中央委員会管轄だもの!あっ、普通科クラス方面の屋上なら入れるかもっ!大体不良が屯ろしてるけど!最強チームの幹部である君達には何の障害でもないよね!GJ!二人っきりで何をするつもりかな?!二人っきりの青空の下で何をするつもりかな?!けしからんもっとやれ!すぐにやれ!僕も連れていけ!

ハァハァ、はっ!
ついうっかり自分の世界に入っていたよ。いけないいけない、そうか始業式なんだから、昨日まで中等部だった彼らも今日から僕と同じ高校生なんだよね。有難う有難う、これで向こう半年は妄想出来るよ!

「ダーリン、烏龍茶飲みたい(*´∇`)」

ぶふ!鼻血吹くかと思ったよ!
高野君!君はそのアイドル顔負けの美貌で何さりげなく小悪魔な表情をしているのかな!流石抱きたいランキング上位だね!
オジサンはもうハァハァ、君が早く小悪魔攻めになってしまえば良いと思っていますよ遥か昔から!

「そんで一気飲みやろーぜ!炭酸はチューハイ以外好きじゃねーし、ウーロンだったらリスク少ないっしょ(*´∇`)」
「はいはい」
「買って買って買ってー(´Д`*)」
「テメ、IDカードどうした」
「忘れてきた。つか、どうせ俺ら同室じゃん?ユーヤのカードありゃ鍵困んねーし゚+。(*′∇`)。+゚」

ぶふ!
いつから!ねぇいつから同室になったんだい?!オジサン知らなかったよ!絶望した!盗聴器もカメラも仕掛けていない自分に絶望した!でも妄想が膨らんで止まらないよ!毎晩君達のベッドが気になって眠れないこと請け合いだよ!
おはようのキスはやっぱり高野君が男らしくやっちゃうのかな?藤倉君の寝呆け顔に男らしく笑って、朝から濃厚なアレコレgdgdktkrけしからんもっとやれ!

「始業式はどうすんだよ」
「総長が見付かるまで街に出る(´`)」
「昼間行ったって無駄だろーが。…あー、はいはい、判った」

無言で藤倉君を睨んだ高野君に、頭を掻いた藤倉君が息を吐いた。何だか深刻な雰囲気だけど、そんなの関係ねぇ!アイアムAKYっ、あくまでも空気を読まない腐男子だからね!気にしないで言わせて貰うよ!
ああ、やっぱり本命には無条件降伏なんだね藤倉。彼女がいるとか言う噂で表立ってモテないけど、僕は判ってるよカモフラージュだとカムフラージュだと。どっちが正しいのか未だに判らないけど、これだけは判るっ。藤倉君、君は無気力受けだね?!

そしてクラスの人気者で実は腹黒な感じだったりする高野君に、幼馴染みの枠を越えられちゃったんだよね?!
二人っきりの時は君が甘えたで、高野君が甘やかしちゃったりしてるんだろう畜生っ非常にけしからんもっとやれ!直ちにやれ!此処でヤれ!これは命令じゃない、命題だー!!!ハァハァ



「あ、…見失っちゃった」


僕は駄目な腐男子だね。
でも悔いはないよ!僕の大好きなカップルを見れた今日はきっと素敵な一日になるに違いないからね!

「あ、あそこに見えるのは超俺様受け候補の光王子じゃまいか!」

ハァハァ。
ああもう、大好きだよ藤倉君。愛しているよ高野君。

でも光王子は僕の大好物なんだ!浮気な腐男子でごめんね!
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©Shiki Fujimiya 2009 / JUNKPOT DRIVE Ink.